IC・KS『ほんとの話』

社会的ウェルネスを目指すインテリアコーディネーター達の取り組み 2019/03/28 社会的ウェルネスを目指すインテリアコーディネーター達の取り組み 2019/03/28

デザイン性や見た目の美しさに人々の注目が向きがちなインテリアコーディネーター(IC)。
しかしICとして求められるのは、専門知識と論理的根拠にもとづき、省エネや安全性、
経済性なども考慮したコーディネート提案です。日々のコーディネート経験を積み重ねる中で、
インテリアコーディネートを通じて見えた社会の課題(防災や高齢化社会、環境問題など)に、
ICとして取り組んでいる資格者がいます。今回は、社会的ウェルネスに貢献すべく奮闘する
IC達の活動を紹介します。(ライター談)

エシカルの概念をインテリアに活かす エシカルインテリアの提案 エシカルの概念をインテリアに活かす エシカルインテリアの提案

インテリアコーディネーター | 冨田 恵子さん インテリアコーディネーター | 冨田 恵子さん

「エシカル」とは「倫理的」や「道徳的」という意味を表す言葉。そして、「誰が・どこで・何から・どのように作ったか」を意識して製品を購入することを「エシカル消費」と呼びます。エシカルの考え方をインテリアに取り入れ、持続可能な社会の実現を目指す、IDMエシカルなインテリア研究会の冨田恵子さんに、活動に込めた思いを伺いました。

インテリアに「エシカル」の考え方を取り入れた
きっかけを教えてください。

これまで長年にわたり、数々のインテリア製品とそれを求めるお客様の間で、要望に沿った室内空間をつくる調整=コーディネートをすることがICの役割と考えてきました。しかし、経済発展を優先した歴史の中で積み重ねられた環境破壊や労働の搾取、安全性の軽視といった多くの社会課題を目にするうち、「ICの社会的役割」について改めて考えるようになりました。また、たとえ自分が本当に良いと思うインテリア製品であっても予算上の制限から提案しづらいことがあり、悔しさやもどかしさを感じていました。

そのような中で、次第に「価格の理由を説明するには、まずその製品のトレーサビリティ(生産履歴)を明らかにし、お客様に分かりやすく説明することが大切」と気づきました。製品の背景にある、環境や社会への配慮、愛着の感じさせるエピソードなどの“おすすめの理由”を、一言で表すためにたどり着いた言葉が「エシカル」です。持続可能な社会を目指すことも、ICの担うべき社会的役割のひとつ。その考えのもと、インテリアにおける「エシカル」の普及について議論する「IDMエシカルなインテリア研究会」が発足しました。

エシカルインテリアの提案に込める「思い」をお聞かせください。

衣・食・住のうち食やファッションの分野では、「エシカル」という言葉を近年よく見聞きするようになりました。住分野においても、「エシカル」の考え方を用いてより身近にサステイナブルを目指せるということを、多くの人に知ってもらいたいと願っています。地球環境や人権問題は、とてもグローバルで大きな課題です。しかし、ICの視点でローカルな解決策を見出し、一つひとつ丁寧に取り組むことが、社会を変える一助になると信じています。

ICに期待されるセンスとは、美しさやデザイン性だけでなく、愛着をもって長く使用できるものや、環境・社会に配慮されたものを見極める感性(センス)も含まれます。私たちはインテリアのプロとしてのセンスを生かしながら、エシカルなインテリアの情報を企業や消費者に向けて積極的に発信し、普及のための調査・研究活動に継続的に取り組んでいきたいと思っています。インテリア製品の作り手側と一般消費者の間に立つICだからこそできることに着目し、活動を進めています。

ICの資格を取得された動機を教えてください。

ICという職種が認知され始めた20数年前、当時勤務していたハウスメーカーのインテリア担当部署にIC登録者は誰もいませんでした。資格が全てではないと思いつつも、資格を持たないことに、どこかお客様に対する後ろめたさも感じていました。IC資格は気になる存在でした。IC資格にチャレンジしようと決めたのは、ライセンスを取得することで自分の提案に説得力を持たせたいと思ったからです。ICとして必要な知識を一通り学習することがこれまでの経験の裏付けとなり、必ずその後の自信と信頼につながるはずだと考えました。そこで一念発起して家事と仕事を両立しながら勉強時間を捻出し、IC資格を取得しました。

ICとして働く日々の面白さや、やりがいを教えてください。

ICは、他人の暮らし方や生活に深く関わる、重大な責任を伴う職業です。だからこそ必死で取り組み、描いていた空間が形となったときには、とても大きな達成感とやりがいが得られます。

個人住宅では目の前に対峙する人の心地よさを、モデルルームなどでは不特定多数の人が「素敵!」と感じる空間を――想像力をフル稼働して自分の引出しから適切なインテリアエレメントを取り出す作業の繰り返しは、膨大な情報や考え方を上手く整理することから始まります。新しいインテリア情報をインプットするため、これまで多くの人やさまざまな製品と出会ってきました。さまざまな交流の中で新しい気づきがあり、思いもよらない扉が開かれます。この仕事を続けてきて、私が一番ワクワクする瞬間です!

人によってペースは異なるものの、ICという仕事は、責任感と情報への嗅覚を保ち続けられるうちは定年も引退もありません。インテリアの仕事は非常に幅広く、生活全般に関わるさまざまな分野で活躍の場があります。何事にも興味を持って実行する力があれば、これほど面白い職業はないと思っています。

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