IC・KS『ほんとの話』

社会的ウェルネスを目指すインテリアコーディネーター達の取り組み 2019/03/28 社会的ウェルネスを目指すインテリアコーディネーター達の取り組み 2019/03/28

デザイン性や見た目の美しさに人々の注目が向きがちなインテリアコーディネーター(IC)。
しかしICとして求められるのは、専門知識と論理的根拠にもとづき、省エネや安全性、
経済性なども考慮したコーディネート提案です。日々のコーディネート経験を積み重ねる中で、
インテリアコーディネートを通じて見えた社会の課題(防災や高齢化社会、環境問題など)に、
ICとして取り組んでいる資格者がいます。今回は、社会的ウェルネスに貢献すべく奮闘する
IC達の活動を紹介します。(ライター談)

楽しく美しく災害に備える インテリアで賢く美防災 楽しく美しく災害に備える インテリアで賢く美防災

インテリアコーディネーター | 前田 久美子さん インテリアコーディネーター | 前田 久美子さん

「防災」と「インテリア」を結びつけたコンセプト「美防災」。防災という言葉が持つハードなイメージを払拭し、美しく楽しい暮らしの備えを提案しています。インテリアを通して、生活者に日ごろの備えと防災意識を啓発する「インテリアで賢く美防災」の取り組みについて、町田ひろ子アカデミーの前田久美子さんに伺いました。

美防災というテーマに取り組まれたきっかけや背景

町田ひろ子アカデミーでは、東日本大震災をきっかけに2013年より、美しく暮らしながら防災に備える「賢く美防災」というテーマに取り組み続けています。その中で、「防災」という言葉に対してハードなイメージを持つ方や、インテリア性がないと考える方が多いことを知りました。東日本大震災から10年近い年月が流れた今、改めて強く思うのは、「備えあれば憂いなし」の心構えで暮らしに臨み、インテリアで防災する具体的なアイディアを発信することの大切さ。そして、ICとして、安全な生活を考えるきっかけを提供することの必要性です。

住まいは本来“巣(ネスト)”です。目に見える家具や素材などのコーディネートによって、安心・安全な“避難所(シェルター)”の機能を持たせることができれば、それは自立した住まいの理想的な形となり、社会的にも大きな意義や役割を果たすことができるでしょう。生活のトータルプロデュースを専門とするICだからこそ、生活者に日常から「楽しく・美しく・使いながら備える」助言や提案ができる。現場でもそう実感しています。

美防災の活動に込める「思い」をお聞かせください。

住まいは買うものではなく、時間をかけてつくりあげるものです。とくに防災においては、時代とともに変化する環境や状況をとらえることが必要です。そのうえで重要なのは、生活者自身がしなやかに慌てず災害に対応できるよう支援することだと思っています。たとえ時間がかかっても、日頃から防災について声を上げていく地道な活動こそが、もっとも災害に強い暮らしの対策になるのではないでしょうか。

ICの資格を取得された動機を教えてください。

前職では、教育現場で様々な子ども達と向き合ってきました。「学校生活で見られる子ども達の様子や成長には、住まいの環境が起因するのではないか」と考えたことが、ICに興味を持ったきっかけです。

住まい=生活の場は、小さな社会そのものです。安心・安全で、生きる知恵を学ぶことができる住まいの環境は、学校教育と同様に、人が成長するうえで大きな役割を果たします。色や形、人間工学などで工夫されたインテリアには、算数や図画工作などにおける「なぜ?」の答えがたくさん詰まっています。それは、身近な生活から知識や知恵が得られる、インテリアの強みともいえるでしょう。それらの経験から、インテリアコーディネートという学びは、生活の基本を理解する「暮らしの学習」であると考え、ICの資格を取得しました。

ICとして働く日々の面白さや、やりがいを教えてください。

これまで住宅を中心に、500棟以上の新築やリノベーションなど、さまざまなインテリアコーディネートを行ってきました。現在も、常に「ライフデザインとは何か」を考えながら、日々仕事に向き合っています。

大切にしているのは、お客様の言葉にならない些細な思いまでも丁寧に拾い上げ、カタチにしていくことです。時代性よりも普遍性、提案を通して完成したインテリアが、お客様の個性やテイスト、暮らし方として現れたとき、この仕事の重要性と大きなやりがいを感じます。

以前お客様から、このようなお手紙をいただいたことがあります。
「一つひとつが、深く、幾重にも重ねられた思考によって作り上げられた空間であることに驚いています。お二人(設計・IC)の真摯な思いに包み込まれているようで、何とも言えず心地よく、満ち足りた思いでいっぱいになります。」

ICとして思い悩んだときは、いつもこの手紙を読み返しています。生活のトータルプロデュースの専門家として、これからも一歩ずつ丁寧に仕事に取り組んでいきたいと思います。

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