IC・KS『ほんとの話』
未経験から40代に入って一念発起し、インテリアコーディネーターの道を志した伊藤直子さん。独立して活躍する現在も自己研鑽を重ね、「ホテルのような部屋にしたい」というクライアントのニーズに応えるため、実際にいろいろなホテルに宿泊することも多いのだとか。真剣に学び、仕事に取り組む姿をご家族も応援し、今では社会人になったお子さん達がブログのアドバイスをしてくれるなど「同志のような間柄」だといいます。そんな伊藤さんに、お仕事のやりがいやこだわりについてお話を聞きました。(ライター談)
- ―インテリアコーディネーター(以下IC)を目指したきっかけは?
- 元々インテリアに興味があり、家具やカーテンを選んだり、ショールームを巡ったりすることが好きでした。結婚、出産を経て長く主婦業をしていましたが、子育てが一段落したのを機に「自分の好きなことに挑戦したい!!」と一念発起。飽きっぽくて習い事も何一つ続かなかった私ですが、アカデミーでの勉強は楽しくて楽しくて仕方がなかったです。周りは年下の方ばかりで、はじめはやっていけるかな~と思ったのですが、主婦業から得られた視点が逆に強みになり、お互いに切磋琢磨できました。インテリアコーディネートって、実生活の経験が生きるんですよね。
- ―インテリアコーディネーター資格を取って、どんな変化がありましたか?
- 「本当にインテリアのプロになったんだ!」という嬉しさでいっぱいでした。資格を持っていることでお客様も安心してくださいますし、名刺を出すときにもとても誇らしい気持ちになりましたね。
- ―お仕事をする上でのこだわりは?
- インテリアコーディネートとはただ家具やカーテンを選ぶのではなく、見た目を超えた“豊かな体験”を実現することだと思います。目指すのは、住む方のストーリーを込めたデザイン、クライアントの生活の質を向上させる住空間です。そのために、素材やレイアウトのバランスに留まらず、モノの生まれた背景や作り手のこだわりまで考え抜き、世界でたった一つの空間を提案しています。そうやって創り上げたコーディネートにお客様が感激してくださったときの喜びはこの仕事ならではです。なかなか他の仕事では味わえないものだと思います。
- ―お仕事で大変だったことはありますか?
- 初めて造作家具をデザインしたときは本当に緊張して、納品日が来るのが怖かったほどでした。でも取り付けが完了したとき、「あ、この仕事は一人でするものじゃないんだ」と気付いたんです。私一人で作ったものではなく、お客様のこだわりや、施工会社や家具メーカーの方の技術などが組み合わさって出来上がったんだと。チームで創り上げるものなんですよね。
- ―お仕事の中で、印象的だったエピソードを教えてください
- あるお客様から「街並みに調和し長く愛される家を建てたい」というお話をいただいたことがありました。「長く愛される家」をヒントに、それなら家具も100年愛される家具を提案しようと、イタリアのチェコッティ・コレツィオーニを推薦し、お客様の旅行日程にあわせて実際にミラノのショールームまでご一緒したんです。お客様も一目で気に入ってくださって、ぜひこれを!となりました。実はこの家具、私がインテリアの勉強を始めた頃からいつかコーディネートしたいと憧れていたブランドでもあったんです。ふと気付いたら、いつの間にかそれをコーディネートできるICになっていました。夢って叶うんですね。大人になると気恥ずかしさもあって、あまり夢や憧れを語らなくなりますが、いくつになっても夢は叶うんだ、と実感させてくれた出来事でした。
- ―今後挑戦してみたいことは?
- 建物は、外観だけではなく中から見える景色も重要だと思うんです。窓から緑や富士山が見えたら、きっととても豊かな気持ちになれますよね。住んでいる方の視点に立った空間発想は、ICが持つ強みなんです。いつか“豊かな体験”が生まれる、住む方のストーリーが生まれるデザインという新コンセプトのマンションを0からプロデュースしてみたいです。きっと叶うよね!
《実例》
築44年のマンション。大きな梁と柱をクリアするため、梁上から垂らしたカーテンや天井まで届く伸びやかなヤシの木を置き、簡易な内装工事のみでゆったりとした空間を演出した。来客との会話も楽しめる窓辺のチェアや、壁のアートもポイントになっている。
ある1日のスケジュール
- 起床。コーヒーを飲んですぐに仕事開始
(カラースキーム、CG制作など)
- メールチェック。朝食
- スタッフ出勤。ミーティングなど
- カーテンメーカーにて打ち合わせ
- 娘の子どもを保育園に迎えに
- 友人と食事
- 就寝
プロフィール
伊藤 直子 さん
Rideaux代表/インテリアコーディネーター
町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー卒業後、百貨店で住宅のインテリアデザインに携わり、2011年株式会社Rideaux(リド)設立。町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー講師も務める。